改革は終わらない。利用者に向き合うことこそがサービスを生み出す

2. 品質、安全、ヒアリング

■異色の経歴

山崎 じつは私も郵便の仕事に就いたのは9年前なんです。それまでは全然毛色の違う仕事をしてましたので、どちらかというと異星人のようなところがあるんです(笑)。だからみんなが当たり前のことだと思っている、たとえば郵便商品のことがよくわかっていない……さすがにいまはそうでもないですけど、日本郵政公社に配属された直後1年くらいは、これなんだっけ? といって、みんなにドン引きされることもありました(笑)。

使う側の気持ちや知識はもっていても、提供する側としてはやってきていなかったので、異星人めいたところは、ひょっとしたらまだ残っているかもしれませんが。

—— かえってそれがよかったところもあると思います。

山崎 あると思いますね。

—— たしか経営学の修士課程を修了されていますよね。

山崎 ちょうど日本郵政公社に入る1年前に履修をはじめて、公社入社の1年後に過程が終わったので2年間だけなんですけどね。まさか私も郵便をやることになるとは思っていませんでした。どちらかというとテレコム行政に長く関わってきていて、携帯電話の料金認可ですとか、そういう分野のことをずっとやってきていました。いまでこそアフリカで携帯電話が通じ、中国でも携帯が普及していますが、それ以前のいわゆる「デジタル・ディバイド」が問題になっていた時代の国際部にいたりしたんです。だから、じつはまさか自分が紙メールを仕事とするようになるとは思っていなかった(笑)。 

メールや電信の発達にともなって物流も発達することは、10年以上前からいわれていることです。ちょうどインターネットが商用化されたのは1993年で、商用化以前は「アルパ・ネット」といわれていました。その時代から私は絡んでいたのですが、まさかこれが商用化され、世界中の誰もが使えるようになり、パソコンを通じて全世界と繋がるようになるとは、おそらく誰一人として想像していなかったと思います。研究者とか、一部の人たちが活用していただけですから。 

それがわずか20年ほどでこの状況になりました。これだけの進歩があったのですから、これを活用することで郵便サービスのヴァージョン・アップはもっとできると思います。それが本当に便利なら、お客様にもお使いいただけると思うんですね。 

■品質管理こそ基本

—— やはり「郵便」というと、どうしても手紙ですとか、そういうフィジカルメディアのイメージが強いと思います。ところが日本郵便のウェブサイトにしてもこれだけインフラが整っていて、全国をカバーする現実のネットワークもある。これをどうやってお客様に認知していただいて、ご利用いただけるのかというところが、民営化以降の課題だったと思います。いま山崎さんが積極的に取り組まれていることはなんでしょうか。

山崎 これだけの大所帯なので、まずはしっかりとした品質管理を基本としてもっていたいと思っています。これまでの取り組みのなかで、足りないところをもっと強化することも含めてですね。「品質」がどういうものなのかを具体的にいえば、転居先に転送できること、期限内のスピードでちゃんとお届けできるていること、間違えずに届けられていること——つまり「確実なお届け」です。あとは安全なサービス提供。当たり前なんですけど、そういうところも含めて、確実なお届けをしていきたい。

もうひとつ、お客様の声をもっと聞くことはやらせてもらっています。全国ネットの事業なので、全国ベースの商品やサービスがどうしても主力になりますが、個々の需要にも応じて工夫して、提供可能なものには対応していく。たとえばある支店ではお客様への対応の仕方をもっと変えていくとか、お客様の声を聞いたうえで個々に取り組めるように、そういうことのできる環境づくりですね。いまはどちらかというとお客様に教えていただくことの方が大きいので、そこは強化していかなくてはいけない。なかなかいっぺんにはいかないですけど、取り組みはじめているという意味ではそういうことです。