改革は終わらない。利用者に向き合うことこそがサービスを生み出す

1.いかにお客様に向き合えるか

■必要だったのは意識改革

—— 民営化までに4年間の公社という期間はあったものの、基本的に国の専有だった業務が民間に移行するときに、その過程も含めて国民にすべてを見られている状況のなかで、組織内にも非常に大きな抵抗がありつつ、しかしこの波には乗っていかなければならないというプレッシャーは、想像を絶するものだと思います。そうした難関をくぐり抜け、民営化から5年が経ちました。民営化後、山崎さんは宅急便のヤマト運輸株式会社をある種のモデルに、そこに追いつき追い越すことを目標に掲げて「レターパック」を開発されました。レターパックはそのひとつだと思うのですが、山崎さんが思い描かれていた構想、そこれがこの5年間でどう実現できたのか、あるいはまだその途上にあるのか、そのところからお話をうかがいたいと思います。

山崎勝代(以下、山崎) 民営化直前は公社でしたが、全員が全員その前は郵政省というお役所で仕事をしてきた人でしたから、どうやったらお客様にもっとちゃんと向かうことができるのか、どれだけ真剣にお客様へのサービスを考えられるか、これがやはりもっとも変革が必要な要素だったと思います。それが民営化という、2007年の10月に迎えた時に一番大きな変化の点だったんです。

でも具体的にどうすればいいかは、なかなかリアルにわからない。それを考えるための助走期間が公社だったと思います。そして助走期間の公社が終わり民営化をしてみて、やはりお客様への向きあい方という点ではまだまだ発展途上なのかな、とは思います。

レターパックもいろいろな試行錯誤のなかからようやく生まれた商品です。前身となる「ゆうパック」や「エクスパック500」の開発がありました。そうした地道な努力をもっともっと重ねなくてはいけないなというのが、今の段階での私の認識です。お客様のための本当のサービス提供というものを掴むまでは、道半ばです。

—— 意識変革が一番肝心な点であると。

山崎 そうですね。自分達で「できている」と思うこともありますが、お客様から「変ったね」といわれるようになれるまでには、まだまだ差がある。ですから、お客様にぴったりと寄り添っているというよりは、一生懸命それに向けて変化しているし、お客様もまた「もっとこれができるよね」と、ある意味裏返しとして期待値が上がっていってしまうんですが、そこを追いかけていく最中なのかなと思います。

■見える化、数時化

山崎 私たちは毎年年間200億通以上の郵便物や荷物を配達させていただいています。1通たりとも配送ミスはあってはならない、そう思ってやっているのですが、やはりどうしても間違いが起こってしまうことはあります。隣の家に誤って届けてしまったり、同姓のお宅に配送してしまったりというケースも皆無ではない。いろいろな手違いから遅配が起こる可能性もあります。ただそこは言い訳をせず、しっかりと完璧を目指しながら頑張っていかなければいけない。お客様からの期待を真摯に受け止めて、100パーセント力を出し切っていく。それがいまのわれわれの使命なのかなと考えています。

私が支社長を務める南関東支社は、神奈川県と山梨県の2県を担当しています。社員約1万8千人が郵便事業株式会社、いわゆる日本郵便ですね、その社員として仕事をし、それ以外に郵便局株式会社、つまり郵便局があります。これが約950局です。少子化の影響もあるのでいまは変っているかもしれませんが、数年前だと小学校と郵便局の数が全国で同じくらいといわれていました。つまり、郵便局はそれくらい身近な存在なんです。だからこそ、ただ単に身近なだけでなく、信頼ができて、なおかつしっかりとした品質のサービスを提供していかないといけない。それにはやはり意識のところですよね。そういう高い意識があって、それに対して努力していく。

この努力をしていくときに重要なのが数字です。今月はこれだけの配達が完了したとか、どれだけのことができたかを社内で客観的に見つめるために、業務を数字化するようにしました。共通意識を持つとともにその意識を高めるという意味でも、数字の管理はいい意味で社員が目標値としてもてるように取り入れてきました。